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リストマーク 全ての始まり(3) 

2006年04月17日 ()
全ての始まり(1)
すべての始まり(2)

全ての始まり(3)は追記から。
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国はその後も一見平和に見えた。
だが、小さな虫が穿った穴の様に目立たぬ所で事態は徐々に進行していく。
見逃さないようにしているつもりだった。
気を張っているつもりだった。
注意を払っているつもりだった。

ならば。

私は、何時、何処で、何を、見落としたのだろう?

シオが国王となって既に3年。
ようやく上層部のお偉い方にも新たな国王の手腕を認めさせ、今や彼を「お人形」として見る者はほぼいなくなった。
「王は多少気弱ながらも思慮分別があり、何よりもいざという時に行動が早い」と言うのが大抵の評価だ。

特に今まで整っていなかった、地方の警備や見回りの構成し、災害時などの被害を大幅に抑えられるようになり、その手腕が特に国民に評価が高く、信頼を得る礎となった。
この、「地方の警備隊」の構成で活躍したのが【海蛇の術師】だった。
元々町長の相談役などもやっていただけあって、交渉ごとに強い。何よりもその話術こそが彼の【術】として一番優れたところなのだろう。
【話術】は言葉を主とした術の中でも一番初歩の術だ。
術師としてこれを突き詰めれば【言霊使い】や【呪歌謡い】等になっていく。

ジャバウォックは当然どちらとしての腕もそれなりにあるのだが、【海蛇の術師】は本人曰く、
「私は術師としての腕はあまり高くないもので【話術】が精一杯です」
本人はそう言うが、ジャバウォックは怪しく思っていた。
確かに使っているのは【話術】までだ。
だが、どうにもその話術の巧みさは【言霊使い】に近い力量を感じる。
【言霊】までの術を使う必要が無いから、使っていない。
それならそれで良いのだが、使えることを隠す理由が無い。

「お前の【話術】の力からすると【言霊使い】まで直ぐになれると思うが、修行してみるか?」
そう声を掛けてみたが、「滅相もございません」と固辞された。

隠れて【言霊】を使っている可能性がある。
そう思い【海蛇の術師】と接触した者を探ってみても、【海蛇の術師】を快くは思っているものの、術を掛けられているような忠誠心は感じなかった。

考えすぎなのか・・・?
いろいろと考えを巡らせている内「きっかけ」となる事件がおきた。




沿岸の街から「土砂崩れが起きた」と連絡が入ったのはまだ朝早い時間だった。
報告では既に街の警備隊が災害後の処理に当たっているらしかったが、どうやら小さな集落が丸ごと飲み込まれたらしい。
「被害状況を確認に行く。」
国王がそう言い出したので、ジャバウォック自身も気になることもあり、付いていく事にした。
【海蛇の術師】は一足早く向こうの街に向かったらしい。

国王の一行が街に着くと、既に人の避難や治療などに関しては殆ど終わった後らしく、残っているのは現場の検分ぐらいだった。
「・・・・・・・・・これは・・・・・・・・酷い」
現場を見て思わず王が呟いた。
ジャバウォックもさすがに顔を顰める。
この位置には20ほどの家からなる小さな集落があったはずだ。
だが、今や見えているのは集落の中央にあった櫓のみ。
しかもその櫓すらも横に倒れ、僅かに屋根を覗かせるのみという状態だ。
警備隊の者たちが必死に家があったと思われる辺りを掘り返しているが、この状態では・・・・・・。
「この集落のものは皆家に居たのか?」
「・・・早朝でしたから・・・・・・多分。」
話によると何故か集落の横にあった山の側面が爆発するような音と共に崩れ落ちたらしい。
それこそ5分もたたないうちの出来事だったらしく、集落に居た人間は逃げるどころか気が付くことすら出来なかっただろう。

「ジャバウォック、生存者を探すことはできないか・・・?」
シオの言葉にジャバウォックは難しい顔をした。
「うむ・・・・・・難しいな。人が居た位置が分かっていれば探れるのだが・・・。」
躊躇っていると【蛇の術師】が話しかけてきた。
「焔の魔女様、もしかしてなんですが・・・・あの櫓の近くに人が居る可能性は高いと思います。」
櫓は畑の見張り用で、丁度収穫時の今、獣に畑が荒らされないよう、見張りが居た可能性は高い、という話だ。

「・・・・・・分かった、やってみよう。」
櫓の残骸に近づきジャバウォックは精神を集中し始めようとした。
だが、それを始める前に地中から何やら「気配」を感じた。
間違いなくこれは【術】が掛けられているものの気配だ。

ジャバウォックはその気配を逃さないようゆっくりと位置を確かめる。
「・・・・・・このあたりだ。そう深くは無い。」
ジャバウォックの台詞に警備隊は器具を使わず手で掘り下げ始めた。
5分もたたないうちに誰かが興奮した声で「見つけたぞ!」と叫ぶ。
土砂の下から掘り出されたのはどうやら青く長い髪の青年らしい。
ジャバウォックが警備隊に近づいて、男を引っ張り出すのを手助けする。
青年は何故か腕を硬く自分の体の前で組んだまま離そうとしない。

「・・・・・・子供か!」
男が腕を合わせ、押さえた上着の下から覗いているのは、紛れも無く小さな子供の腕だった。




夜まで粘ってジャバウォックは生存者を探ってみたが、結局集落での生存者はこの2人だけ、という事らしく、結局他には見つからなかった。
「大体あの山が崩れる前兆なんてあったのか?」
雨が降っていたなら地すべりということもありえるだろう。
だが地滑りが起こるほどの激しい雨はここの所降ったことが無い。
また気になるのが、近隣の住人の聞いた「爆発したような音」だ。

「山を意図的に崩すとなると個人の仕業ではない・・・よね。何か組織的なものによる事件の可能性が高いかな・・・。」
シオの言葉にジャバウォックも頷いた。
と、なると「誰が、何の為に」が次に来る疑問だ。
小さな集落には別段これと言った特長は何も無く、どうしてもその集落を意図的につぶす理由が見当たらない。
二人が黙り込んでいると兵の一人が、先刻助けた2人が眼を覚ました、と知らせを持ってきた。
「・・・・「誰が、何の為に」それを探るためにも、2人の話を聞いてみるか・・・。」





2人は街の中心にある警備兵用の宿舎の一室に収容されていた。
ジャバウォックが2人の部屋を訪れると、青年はベッドに腰掛けた状態で瑕の治療を受けており、彼が抱えていた子供は横でまだ眠っているようだった。
「すまない、少し話をしてもいいか?」
ジャバウォックが話しかけると男はバカ丁寧に頭を下げた。

「お前はあそこの集落に住んでいたものか?」
ジャバウォックの質問に青年は首を横に振った。
「何だ、違うのか?ならば何処から来た者だ?」
男は戸惑ったように、さらに首を横に振った。
「何だお前・・・・・・」
そこまで言ってジャバウォックは唐突に青年の顎を持ち上げ、首をジッと見る。
「お前・・・・・・喉に呪いを掛けてあるな。声が出ないのか。」
手近の兵士に頼み紙とペンを持ってこさせると、ジャバウォックは青年に手渡した。
(助けていただいてありがとうございます)
青年が書いた文字を見てジャバウォックはもう一度同じ質問を投げかけた。
「お前は土砂の下敷きになった集落の者ではないのか?」
(いいえ、違います・・・・・・違うと思います)
青年の曖昧な言い方にジャバウォックは首を捻った。
「何故、そんな曖昧な答えなのだ?」
(すいません・・・・・・・・・思い出せないのです)
「記憶喪失か?」とジャバウォックが聞くとそれには男は首を振って、さらに書き進めた。
(いえ、自分の名前や経歴は覚えています。ただ、何故自分がここにいるかが分からないのです。私は確か船に乗って故郷のある北に向かっていたはずなのですが)
「・・・・・お前の名前は?」
(ドーマウス、と言います。)
その後もジャバウォックが住んでた国や職、経歴を聞き出してみたが、どの質問にも淀み無く答えるのに、何故この国に着たのかと言うあたりから記憶がまったく無いらしい。
つまり。
どうやら「記憶が抜け落ちている」と言うのが正しい状態のようだ。
今回の事故によるものなのか、それとも・・・・?

考え込んでいたジャバウォックだったが、ふと思い出したようにドーマウスの横に居る子供を指差した。
「横の子供はお前の連れか?お前が抱え込むようにして庇っていたんだが。」
青年はそう言われて初めて自分の横に居る子供の存在に気が付いたらしい。
その顔を覗き込んで戸惑ったように首を横に振る。
(いいえ・・・・・全く見覚えの無い子供です。)

今回の事故はただの事故ではなかった。
そう考えざるを得ないような状況に、ジャバウォックは軽くため息を付いた。

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[2006.04.17(Mon) 01:43] 長編小説Trackback(0) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 全ての始まり(2) 

2006年04月10日 ()
全ての始まり(1)

全ての始まり(2)は追記から。
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国王は優しい男だった。
父親である前国王の突然の死によって新国王となったが、その優しさゆえか人に命令を下すという事がなかなか出来ず、ただ居るだけのお人形のように扱われていることもあった。
ジャバウォックは彼を国王になるよりもずっと前から良く見知っていた。
国王には向かない男だ。それも分かっていた。
だが。
彼が国王を降りるわけには行かない。
ならば、となるべく彼のそばに居て助言を与えてやるようにした。
「ジャバウォックはオレが国王になっても変わらないね。」
「お前が国王になった事で態度が豹変するような男だったら変えてやったんだがな。・・・・・・お前が変わらないのに、何故私が変える必要がある?」
そう言い返すと、男は少し寂しげな表情で笑った。

相手が国王となれば周りの態度は一変したはずだ。
ただの世継ぎの一人だった頃は一緒に遊んでくれる相手もいた。
朝からこっそりと森や湖に遊びに出かけ、夜は一緒に酒を飲み冗談を言い合う友人。
飲みつぶれた挙句朝帰りの彼を、親の代わりに怒ってくれた世話係。
もう誰も、彼に親しい口を聞いてくれる者は居ない。・・・・・・ジャバウォック以外は。

「王に向かってその口の聞きようは」と何度も言われているが、ジャバウォックの国王に対する態度は全く変わらなかった。
「私の口から出る言葉には術が掛かる。自分の意に沿わない言葉は使わない。」
高位術師の言う事では誰も口出し出来る筈も無く、次第に誰もが見て見ぬ振りをする様になった。

ジャバウォックは男の望みは大抵何でも聞いてやったが、一つだけ、聞けない願いがあった。
「名前を・・・・呼んでもらえないのかな?」
男は何度もそう望んだがジャバウォックは首を横に振った。
「私の口から出る言葉には術が掛かると言っただろう。人の名前を呼べばその人物に対して術を無意識に掛けてしまう恐れもあるのだ・・・・・だから出来ん。」
「でも・・・・・一人だけ名前で呼んでたよね?何年か前に新天地に旅立った・・・・従兄弟、だっけ?」
嗚呼、とジャバウォックは思い出した。
「ハンスのことか・・・・・あれは従兄弟というか・・・・どこかで血が繋がってる、程度のモノなんだがな。」
そう前置きしてから軽く息をついて続けた。
「ハンスはな・・・・・特殊だ。説明がし難いが・・・・・まぁ人では無い、ぐらいの強運と強い精神の持ち主なのだ。だから術の影響をあらゆる意味で受けない。」
そのおかげで唯一名前が気にせず呼べるんだがな、と呟いた。

説明はしてみたものの、男はやはり羨ましそうな、がっかりした様子でジャバウォックを見ていた。
暫くの間黙っていたが、やがてジャバウォックはため息をついて提案を出した。
「・・・・・分かった、本当の名前を呼ぶことは出来ない。だからお前が自分自身にあだ名を付けろ・・・・・・それで呼んでやる。」
そう言うと男は嬉しそうに笑って「ちょっと待ってね」と一生懸命考え始めた。

そうして30分も考えた挙句ジャバウォックにそっと耳打ちした。
「分かった。今日からお前をそう呼ぼう。」
一息置いてその名を呼ぶ。
「・・・・・・シオ、そろそろ会議の始まる時間だ。行くぞ。」
呼ぶと男は破顔一笑した。





慣れないながらも男は必死に「国王」という役職を勤めようとしていた。
中でもジャバウォックを何かと頼りにしていたが、ジャバウォックの方はそれでは良く無いという事を良く理解していた。
一人だけを特別視すれば必ずそれを良く思わない者が出る。
ジャバウォックはシオに自分以外にも相談できる側近を作るようにと勧めた。

男は最初は戸惑っていたが、色々と周りに相談する内、何人か信頼の置けると判断した人間が出来たらしい。

どの人物も特にこれと言って害はなさそうに思えたが、一人だけジャバウォックが気にする人物が居た。

その男はジャバウォックと同じく【術師】と呼ばれていたが、その才能は術よりも話術と参謀に長けてるらしい。
術師らしく男は本名では無く【海蛇の術師】と名乗った。
額の海蛇の刺青から付けたあだ名であろう。

「色々な国を旅してたらしいよ。博識で城下町で町長の相談役をやってたんだって。」
シオはその男を気に入ったらしく、政の相談以外にも男の冒険譚や他国の物語や歌等を聞いたりもしていた。

礼儀も正しく、人当たりも良いのだが、ジャバウォックは何故かこの男が気に入らなかった。
回廊ですれ違う時も高位術師であるジャバウォックに、礼儀に習って深々と礼をする。
「町長の相談役をやっていたと聞いたが、その前は何をやっていたのだ?」
ジャバウォックに聞かれると男はうやうやしく頭を垂れたまま、答えた。
「はい、恥ずかしながら術の腕を磨く為、と言う名目で諸国を旅しておりました。・・・実際は観光に近い状態でしたが。」
そう言って男は微笑む。
「出身は何処だ?」
「・・・申し訳ありません。私は捨て子だったらしく出身地はよく分からないのです。顔立ちから多分北方系ではないか、と言う事なのですが・・・。」
そつの無い答え方だったがジャバウォックは男の表情を注視していた。

皆が「人当たりの良い」という表現をする微笑。
だがジャバウォックにはそれは「人形の様な」としか表現の仕様が無かった。
感情の無い、何を考えているか分からない表情。
表面だけ笑っている表情が張り付いているのが気持ち悪く感じた。
「【焔の魔女】様・・・・・・私、まだ王宮に慣れない事もあり、失礼をしているかもしれません。至らぬ所があったらはっきり言ってください。」
お願いします、と頭を下げる。
周りに人目があるのを分かってやっている、そう確信があった。
だが今の時点でそれを言えば自分が悪者になるのも分かっている。
「・・・・・気にするな、ただの世間話だ。」
相手の術中に嵌まらないようにしなければ。

国王に信頼できる側近が出来たのは喜ばしいことだ。だが・・・・。
ジャバウォックはその後シオの近辺に今まで以上に目を光らせるようになった。

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[2006.04.10(Mon) 00:30] 長編小説Trackback(0) | Comments(0) 見る▼
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リストマーク 全ての始まり(1) 

2006年04月08日 ()
全ての始まり(1)


「行け!早く船を出すんだ!」
女が叫んだが、迫る衛兵らしき姿に船に青年は乗り込むのを躊躇する。
それを見た女が不敵に笑って言った。
「ここは【焔の魔女】に任せて置け。・・・・・・後で追いかけさせてもらう。」
そう言ってもう一度叫んだ。
『行け!ドーマウス。船を出せ』
魔力の篭った声だった。
ドーマウス、と呼ばれた青年はその声に従うように船に乗り込んでいった。
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「さぁて・・・」
女は相変わらず余裕の笑みを浮かべたまま、自分を取り囲んで行く衛兵達をぐるりと見回した。
真っ赤な長い髪が、焔のように揺れる。
「さぁ、誰だ?【焔の魔女】に縄を掛ける勇気のある者は。・・・・・・抵抗はしないぞ?」
その言葉だけで明らかに狼狽する衛兵達の間から真っ黒なトーガの男が一歩進み出した。
男の額には【海蛇】の刺青が刻まれている。
「貴女様に縄を掛けるなどと、そんな失礼なことはいたしません。どうか宮殿に戻っては頂けませんか?・・・・・・ジャバウォック様」
男の顔には微笑が浮かんでいたが、その表情はまるで感情のある生き物のようには見えなかった。




ジャバウォックは物心がついた時には既にその国で【特別】な存在だった。
小さな国には王がいて、その存在が当然一番ではあったが、別格で【高位術師】と呼ばれる存在があった。
高位術師とは魔術や占いを生業とする者の中でも特に力の強い者1名だけが選ばれる。
王の補佐に付き、祭事を司り、時には国政に助言を与えるという大事な地位だ。

現在その地位にあるのがジャバウォック。
その真紅の髪から付けられたであろう畏怖を籠めた呼び名が【焔の魔女】

「貴女は自分のやった事が極めて重大な問題である事を自覚しておいでか?【焔の魔女】よ!」
ことさら優位に立った様な言い方をする男に、ジャバウォックは無表情で答えた。
「無益に人が殺されるのを止めただけだ。何の問題がある?【海蛇の術師】」

あれから一室に監禁され、自由を奪われている立場の筈なのに、1週間経っても全く変わらない様子が【海蛇の術師】と呼ばれた男の癇に障ったのか、ジャバウォックの胸を杖で突いて声を張り上げた。
「貴女は今や【国賊】と呼ばれても仕方ない立場ですぞ!今や崩れ落ちようとしている国の【礎】を築き直す、大事な神事を個人の感情で台無しにしたのだから!」
海蛇の術師が凄んだ所でジャバウォックの表情に変わりは無く、それどころか興味なさそうに欠伸を一つ漏らして、サイドテーブル上にあった酒瓶を傾け始めた。

ふと、ドアを叩く音がして、衛兵が一人入ってくる。
何やら伝言を聞いた途端、蛇の術師は勝ち誇ったように笑いを漏らした。
「・・・・・・ククク、貴女はあれで彼等を逃がしたつもりの様だが残念だったな。」
男はじらしているつもりなのか、わざわざ途中でサイドボードの中からワインを取り出し注ぐと、一口上手そうに飲んだ。
「たった今、船を追っていった者より連絡が入った・・・あの船は沈んだそうだ・・・・贄の娘も、ドーマウスも、もろとも、な。」
それを聞いてもなお、驚く様子の無いジャバウォックに痺れを切らしたのか、海蛇の術師が更に付け加えた。
「・・・・ドーマウスはな、喉を切り裂かれ、背を刺されて死の寸前で船倉の一室に籠ったらしい・・・贄の娘と共にな。その船が沈んでも、誰も出てきた様子は無かったそうだ。まぁ、出てきたとしても・・・大地も見えない海の真ん中だったようだから、無駄だろうがな。」
そこまで聞いてジャバウォックが顔を伏せる。
その様子に男が満足げに微笑んだが、同時にジャバウォックが耐え切れなくなったように笑いを漏らした。
「・・・・・・フフフ、阿呆かお前は。・・・この私が何もせずに2人を送り出したとでも?」
ジャバウォックの言葉に海蛇の術師の顔が歪む。
「・・・・・・人の生死にかかわる言霊は使えないはずだ。」
その表情を見て満足げにジャバウォックは彼らに捧げた祝福の言葉を繰り返した。
「『ドーマウスとアザゼルは新天地の大地を踏む』・・・・・・お前の事だ、事を性急に運んで海の上で全てを終わらせるだろうと思っていたからな。」
男の顔色が赤くなり、青くなり、やがてどす黒く染まるのを、ジャバウォックは面白そうに見つめていた。

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[2006.04.08(Sat) 00:25] 長編小説Trackback(0) | Comments(0) 見る▼
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