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リストマーク 私の名前。 

えー・・・年末用の小説を自分のところのキャラだけで考えようとしましたが、何故か年明け2日までかかってしまった上、思いのほか重い話に仕上がってしまい本人ももうどうしようと言う感じですorz
しかも書き上げてから気が付いたんだけど、別にアザゼルとドーマウス出す必要なかったんじゃないかとk
いえ、まあ人数的に賑やかな食卓が欲しかったもので。
・・・・アレ?ドーマウス喋んないからちっとも賑やかじゃない(ry
・・・ま、いっか。枯れ木も山の賑わいって事で(酷

取り合えず上から蓋だけはしておきましょう(何



うっかり見つけちゃった人。
重い話だという事を了解の上で「読むぜ!」と言う人だけ下の追記からどうぞー。







神様、私の本当の名前を教えてください。





「そうか、もう年末か。」
ジャバウォックがポツリとつぶやいた言葉にバンダースナッチはため息を付いた。
「旦那様~、明後日はもう新年ですわよ~?今更その台詞は遅くありませんか~?」
「そうは言ってもずっとカリブで戦いっぱなしだったしな。地中海に帰ってきたのも久々の気がするぞ。」
「そうですわね~?」と返してからバンダースナッチは足を止めた。
「旦那様、ついでですからご馳走の準備でも買って戻りませんか~?ほら、明日の夜には姉妹さんのご招待でまた出かけないといけないでしょう~?ですから今日ぐらいはアパルタメントでゆっくりと~。」
ドーマウスもハンスの娘も丁度マルセイユにいるらしい。
「そうするか」とジャバウォックはバンダースナッチと共に市場へと向かった。

市場は港の直ぐ近くなのだが、流石に年末だけあってかなり騒がしく、行商人の出入りの他、船の出入りも激しく活気がある。
「バンダー、大丈夫か?」
両手にたっぷりの食料の入った紙袋を抱えた副官に声をかける。
「旦那様のもっていらっしゃる量の半分もありませんもの~、だいじょうぶですわよ~?」
ジャバウォックは大きな荷物を肩に抱え上げ、もう片手にも更にバンダースナッチが持ってるのと同じ大きさの紙袋を抱えている。

大きな荷物が邪魔にならないように、となるべく人の少ない道を選んでアパルタメントへと急いだ。
「・・・あの旦那様、ちょっと止まっていただけますか~」
多少緊迫した声にジャバウォックが振り向くと、路地からバンダースナッチの首を掴み、ナイフを突きつけている姿がわずかに見えた。

顔がよく見えなかったが、相手に隙を与えず、ジャバウォックが素早く取り出した銃をその人物に突きつける。
肩に担いでいた荷を降ろし相手の顔を見て、ジャバウォックが初めて驚きの表情を見せた。

「子供じゃないか」
ナイフを突きつける姿はどう見ても10台の少女としか見えなかった。
黒いコルセアシャツにバンダナ、顔には大きな傷がありきつく光る瞳は野良猫のようだ。
手足も傷だらけで、その姿は海賊か盗賊に見えなくも無いが・・・。

ジャバウォックは突きつけていた銃を下ろすとため息をついた。
「子供のいたずらで済む話じゃないぞ・・・大体バンダー、お前は何故素直にナイフを突きつけられるままになっているんだ。」
バンダーは相変わらず喉にナイフを突きつけられていたが、慌てた様子も無くのんびりと笑っていた。
「だって、無茶をして旦那様が手を出したら大変な事になりますもの~、大人しくしていたほうが、加害者側にならずにすむかと思いまして~」
バンダースナッチの台詞にジャバウォックはもう一度ため息をつくと、少女に向かって諭すように言った。

「こういう事は1度やると歯止めが効かなくなるぞ・・・自分をもっと大事にしろ。」
「お腹がすいてるのかしら~?それともお金が欲しい?」
バンダースナッチがそう言った途端、少女のお腹が正直な音を立てる。
少女の頬がカッと朱に染まった。

「馬鹿にしないで!これでもインドでは名の知れた海賊の娘よ!人を斬る事なんてなんとも思ってないんだから!」
ナイフを更にバンダースナッチの首筋に近づける。
途端バンダースナッチが「あ、痛い」と声を上げた。
少女が驚いたようにナイフをバンダースナッチの身から離すと、バンダーはそのナイフをいつの間にか抜いた曲刀で弾き飛ばした。

「ふふ、人を斬る事をなんとも思ってないなんて・・・そんなすぐばれる嘘をついちゃいけないわよ~?」
バンダースナッチは曲刀を仕舞うと、驚いて転んでしまった少女ににっこりと笑いかけた。
「今日はね、ご馳走を作る予定なのよ~、よかったら貴女もこないかしら~?」
そう言って、少女を引き起こそうと肩に触れると、少女が反撃してきた。

そしてバンダースナッチの手をすり抜けると路地の向こうへと消えていく。
「バンダー、大丈夫か?」
少女が立ち去った後も何故かバンダースナッチは手を押さえたままじっとしている。
振り向くと苦笑いで答えた。
「いたた~、旦那様、かまれちゃいました~」
そう言って出した左手の甲にはうっすらと赤い噛み跡がついていた。


「何か野良猫みたいな子でしたわね~」
料理を作りながらバンダースナッチが呟く。
言ってるのはもちろん先刻バンダースナッチを噛んだ娘の事だ。
「あれは本当に海賊の娘なのか?それにしては妙に純血の色が濃かったが・・・。」
真っ白な肌にエメラルドの瞳、亜麻色の髪。
その色はどれをとっても貴族に生まれた身でしかそろわなさそうな色合いだった。

「でも貴族の娘さんはあんな格好で外に出れませんわよ~?」
第一外に出たとしても一人でうろうろしているものでもないし、ましてや盗賊まがいの行動をとるなど考えられない。
「ふむ・・・・」
ジャバウォックは長椅子に座り込み何か考え込み始めた。



「またきたのか!とっとと帰れ、お前のような娘は知らんと子爵様もおっしゃっている!」
立派な建物の前で門番に阻まれ、後ずさりしながらも少女は叫んだ。
「別に私を知らなくてもいい!だから・・・教えて貴方が死んだという娘の名前を!それだけでいいの!」
門の中に入った家族の内、少女より少し若い娘が不安そうな目で振り返り、そうして横の父親を仰ぎ見た。

 「・・・死んだ娘に名など必要無い。」
男が唯一吐いた言葉はそれだけだった。




少女はカリカット近辺で育った。
物心付いた時から海賊船の上で育ち、海賊頭を父として娘ながらに小さな時から剣と砲に長け、父から「頼もしい娘だな 」と言われるのが何よりも嬉しかった。
海賊の娘である事を不幸だと思ったことは無い。
半年前、運悪く海軍の船に拿捕されてしまい、全員で捕まったあの時も。

捕まれば当然最後に待つのは死。
それでも仲間と、父と一緒ならいいと思っていた。
それなのに・・・・

「それはお前の娘か。」
軍人の質問に海賊頭は笑いながら首を振った。
「いいや、俺には娘なんていねぇよ」
「・・・お父さん?」
驚いて父の顔を見ようとしたが、押さえつけられてそれもままならなかった。
「調べればわかる事だけどな、17年前カリカット沖でフランス貴族の船を拿捕した。その時船に乗ってたやつはとっとと自分の船を見捨てて小船で逃げたらしいんだが、船倉に赤ん坊が置き去りになっててな。」
それがこいつさ、と海賊頭は少女を指差した。

「しかし今は海賊の娘だろう?」
軍人の疑問の声に海賊頭が大声で笑う。
「バカ言うな!いずれフランスにこいつを連れて行けば身代金でもとれっかと思って預かっていただけだ!こうなったらもう顔も見たくないね。」
さっさと連れて行ってくれ、そう言った父の言葉を信じれず、少女は無理やり立ち上がって父親に縋ろうとした。
海賊頭は隠し持っていたナイフを取り出し、少女の眼前で振りかざした。

押さえつけられていた反動で大きく前に飛び出た少女の顔をナイフの切っ先が撫でる。
あ、と思った時には既に少女の左目の辺りから鮮血がほとばしっていた。
「何をするか!」
驚いた回りの軍人が止めに入り、海賊頭はナイフを取りあげられて取り押さえられた。
それでも、少女は海賊頭に向かって自分の名を叫んだ。
私は、貴方の娘ですよね、と。

「それはお前の名前ではない」
それが海賊頭の答えだった。


少女はその後気を失い、医師の元に運ばれ傷の手当てを受けた。
色々あった事からか寝込んでしまい、目が覚めた頃には、仲間と、家族と思っていた人達はもう死の国へと旅立った後だった。

本当は分かっていた。
海賊頭が自分だけでも逃がす為にああ言ったのだと。
ナイフの切っ先が刺さった時の、意外そうな、驚愕した表情が語っていた。
・・・でも。

少女はそれから殆ど口を聞かなくなった。
どうやら軍がフランスに確認を取り、海賊頭が言っていたことは本当だったと騒ぎ出した。
しかしもはや興味の無かった少女は何もせずただ座っているだけだった。
随分と長い間揉めていた気がするが、気が付けば定期船に乗せられ、マルセイユへとその身を移送されていた。

王宮近くにある邸宅に連れて行かれ、中に入ると立派な身なりの男が立っていた。
入ってきた少女の姿をあからさまに眉をひそめた表情で見回す。

少女は貴族らしいドレスを身につける事を嫌がり、今もコルセアシャツのままだった。
今までに何度も見たことのある男の視線。
それは海賊である時も、街中や酒場で何度も体験した。
人じゃない、汚いものを見る目だ。

少女は何も言わなかった。
別に娘だと認めて欲しいわけでもない。このまま放り出された方がいっそ楽だ。
男は予想通りの答えを返してきた。
「・・・私の長女は既に死んだ。ここにいるのは海賊の娘だ。私は知らん」
だがその海賊の娘としても自分は否定されたのだ。
今まで呼ばれていたその名前さえ、お前のものではないと。

「・・・名前。」
カリカットで倒れてから初めて少女が自主的に話した言葉だった。
「その子の、名前は?」
貴族なんてなりたくない、お金も何も興味ない。
でも、名前が欲しい。
誰かに呼んでもらえる名前が。

「お前には関係の無い名前だ。」
男はそう言って部屋を出て行った。」


少女はその後困り果てる軍人を残し、邸宅を出て男の後をつけた。
屋敷の位置を確かめ、何度も名前を聞きに訪ねては追い払われ、酷い時には衛兵を呼ばれたりもした。

郊外や空き家で夜を過ごし、昼は男の屋敷の周りをうろうろしたりとしていたが、金も持たない身では長く持つものではなく、空腹にかられて初めて強盗を働こうと思った。

でも・・・変な相手だった。
ナイフを突きつけても悲鳴も上げない、驚きすらしていない。
一緒にいた赤い髪の人が強そうだったからその所為かも知れない、と思った。
でも・・・ナイフを取り上げた後も通報する気配すら見せなかった。

「あの人達、何なんだろう・・・?」
少女は自分が今走ってきた方向を振り返った。


「旦那様~、そろそろ出来上がりますわよ~?」
「嗚呼・・・」
そう言って立ち上がりかけたジャバウォックが窓の外に目をやる。
「どうしました~?」
バンダースナッチが聞いたが返事をせずそのまま裏口から出て行く。
バンダースナッチは特に追いかけるでもなく料理を広間に運ぶと、次は治療薬を用意し始めた。

「戻ったぞ。」
5分とせずに戻ってきたジャバウォックは小脇に先刻の少女を抱え戻ってきた。
だいぶ暴れまわって疲れたのか、少女の姿は少しぐったりとしている。
しかしジャバウォックはやけに楽しげな笑みを漏らして、バンダースナッチのほうに左手を突き出して言った。
「野良猫に噛まれた。」
バンダースナッチはにっこり笑って治療薬を差し出した。


「早く食べないとさめちゃうわよ~?」
バンダースナッチがそう言いながら料理を小皿にのせて少女の前にどんどん置いていく。
「あ、あたしもそれほしいー」
アザゼルが小さな体を無理やり伸ばして料理を取ろうとするのを、ドーマウスが制して小皿に取り分けてやる。
「ありがとー」
嬉しそうに笑って料理を食べながら少女のほうを向いて首をかしげた。
「食べないの?おいしいよー?」
にこにこと無邪気な笑顔ですすめられて、少女はゆっくりと料理を口へと運んだ。

「・・・・美味しい・・・・」
少女の漏らした感想にバンダースナッチが嬉しそうに「ありがとう~」と答える。
一口食べたら勢いがついたのか、少女は目の前のご馳走を食べ続けた。
ジャバウォック達は食事中少女に何も聞かなかった。
ただ自分たちの話をし、少女には食事をさせることに専念させたのだ。

食後のお茶も済んだ頃、少女が居心地悪そうに身じろぎし始めたのを見て、ジャバウォックはバンダースナッチを呼ぶと一言「頼んだぞ」とだけ伝えた。
「わかりました~、ではドーマウスさんはいつものお部屋を使ってくださいね~、後の2人はこっちよ~」
はーい、と気持ちのいい返事をしてアザゼルは立ち上がると、少女の腕を引っ張った。
「いこっかー?」
にこにこと笑って「はやくはやくー」と言うアザゼルに逆らうことも出来ず、ジャバウォックのほうを見る。
少女は何か言いかけたが、そのまま半ば強引にアザゼルに引っ張られて広間を後にした。


「おやすみなさいー!」
ベッドにもぐりこむとアザゼルはあっという間に寝息を立て始めた。
少女はどうにかしてこの場を逃れたかったのだが、アザゼルが自分の片腕を掴んだまま眠り込んでしまい、それも出来なくなってしまった。

「灯りが消せないけど大丈夫かしら~?」
寝るだけなのに何故?と言う疑問もあったが取り合えず頷くと、バンダースナッチもベッドに入り「それじゃあおやすみなさい~」と目を閉じた。

少女も一応寝転んで目を閉じてみたものの寝れるはずも無く、ただじっと息を潜めているような状態でただ考えていた。

自分は何故こんなところにいるのか。
明日になれば衛兵に突き出されるんだろうか?
これから自分はどうすればいいのか。

そして

自分はいったい何なのか。


何時間立っただろう、隣に眠る少女が寝返りをうち、自分の手を離してかわりにバンダースナッチの手を握った。
少女は2人を起こさないようにそっとベッドから抜けると、部屋から出て行った。

そっと広間を覗いてみると真っ暗で誰もいないようだ。
少女は手探りで真っ暗な広間を抜けると、玄関のドアへと向かった。
しかしドアには施錠がしてあり鍵が無いと開きそうにない。
仕方なく窓からでも出れないか、と振り向くと窓の前に月の下でも赤い髪の大きな姿が立っていた。

「月夜の散歩とは風流だな。私も付き合わせてもらおう。」


他の者を起こしてはいけないとそっと外に出ると、人の殆どいない広場に出た。
少女はそのまま逃げようかとも思ったが、相手にはそれを許してくれるような隙が見当たらなかった。
何も言わずにただ立っているジャバウォックに少女は小さな声で尋ねた。

「私を・・・どうするの?衛兵に突き出すの?」
その問いにジャバウォックは答えず、ただ少女を見つめていた。
「貴方たちは何なの?・・・私に何をさせたいの!?」
最後のは叫びに近かった。

「お前はどうしたい?」
暫くの沈黙の後に返ってきた言葉に、少女は「え?」と反射的に聞き返してしまった。
「私がどうしたいか、を聞いても仕方がないだろう。私はどうするつもりも無いからな。お前の行動だ、自分で決めろ。」

自分で・・・・?
少女は明らかに狼狽した。

私は何をしたいのか、私は何故ここにいるんだったか・・・。
そう考えた途端少女は意識せずポツリと呟いた。
「・・・名前。」
「ん?」
ジャバウォックが首をかしげたのも少女の目には入っていなかったらしい。

「名前・・・」
名前が欲しい。自分が自分だと言う証に。
だがその言葉はあふれる涙に飲み込まれた。

突然泣き始めた少女にジャバウォックは珍しく困ったように眉間にしわを寄せる。
「ふむ・・・」
と呟いたきり10分近く立っただろうか、いきなり「・・・チェシャネコ」と言う声が聞こえて、泣いていた少女は顔を上げた。

「チェシャネコ、と言うのはどうだ?どこかで見た言葉なんだが・・・確か笑うネコ、と言う意味だったかな。野良猫じゃあんまりだしな。」
少女はジャバウォックが何を言いたいのかがよく分からず、泣くのも止めて困惑した顔を上げた。
「旦那様~、最初から説明しないとわかりませんわよ~?」
割り込んできた声はバンダースナッチだった。

アザゼルを置いてくる事はできなかったのか、腕に抱いたままいつの間にか広場に立っていた。
少女の傍に寄ると、バンダースナッチはアザゼルを起こさないようにという配慮からか、小さな声で話し始めた。
「旦那様はね~、訳あって人の本名(フルネーム)を呼ばないようにしてるのよ~。だからちゃんと名乗らないと、勝手に名前を付けて呼ばれちゃうわよ~。」

どうやらジャバウォックは少女が「名前を呼んで欲しい」と思っていると解釈したらしい。
そうではないのだが、それよりも少女はバンダースナッチの最後の言葉に反応した。
「名前を・・・付ける?」

じゃあさっきの「チェシャネコ」と言うのは私の事・・・?
考えているだけで口に出したつもりは無かったのだがどうやら周囲に聞こえるぐらいの声で呟いていたらしい。
バンダースナッチが「そうよ~」と返事をしてからジャバウォックに言った。
「旦那様~、だいたい「チェシャネコ」は「笑うネコ」じゃなくて「よく分からない笑顔を浮かべる」っていう意味の言葉ですよ~?そんなんじゃ・・・」
怒られますよ、とバンダースナッチは少女の怒りとも悲しみとも違うその表情に驚いて言いかけていた言葉を飲み込んだ。

「もう一度、名前を。」
その言葉にジャバウォックはバンダースナッチと顔を見合わせて首をかしげたが、少女の真剣な表情に、口元を引き締め夜空に響く声でもう一度その名を呼んだ。

「チェシャネコ」

「私の名前・・・・」
少女はまた涙を流した。
死んだ子供の名前でも、否定された娘の名前でもない、私の名前。

その名前を何度も頭の中で繰り返しかみしめていると、「返事は?」と言う声が飛んできた。
虚を付かれた、と言わんばかりのまん丸の目でジャバウォックを見る。
「名前を呼ばれたら返事をするものだろう?」
そう言ってもう一度ジャバウォックが呼ぶ。
「チェシャネコ」
「・・・・・・はい!」
少女に初めて笑顔が浮かぶ。

そうして私の名前は「チェシャネコ」になった。



「チェシャ、何をぼーっとしているんだ?」
大晦日、セビリアの市場からの買い物帰りに、1年前のあのマルセイユの市場を思い出していると、ジャバウォックに軽く背中を叩かれた。
「・・・姐御様、自分で付けた名前なのに、あれから結局きちんと呼んでくれないんですよね。」
チェシャネコがため息と共に呟くと、食料の詰まった大きな袋を抱えたバンダースナッチが「しかたないわよ~」と笑う。
「だって旦那様は訳あって人の本名を呼ばないようにしてるんだもの~」
その台詞はチェシャネコにとって最も嬉しいものだった。
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[2008.01.02(Wed) 02:02] 短編小説Trackback(0) | Comments(0)
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